生息域内保全の略
保全対象とする種や個体群を、その本来の生息地で、必要な環境要素や
その規模を確保することで保全し、絶滅を避けようとする考え方。
「世界保全戦略」(1980)などで提唱されてきた。
「生物多様性条約」では、生物多様性の保全は、生態系や自然の生息地を保全する、
「生息域内保全」を原則とし(第8条)、その補完的措置として「生息域外保全」を
位置づけている(第9条)。
また、生息域内保全を達成するための手段として、適切な保護地域システムの
配置とその管理、劣化した生態系の修復・復元と絶滅の危機にある種の回復、
移入種の防止・制御、先住民などの伝統的生活や知恵の尊重などを掲げている。
比較的移動性が低く、渡りをしない種群について有効な方法であり、渡り鳥や
回遊魚(クジラ類を含む)など、長距離を移動する生物の場合には、
全生活環を含んだ国境を超えた対応が必要なため、保護地域システムの
設定・管理は著しく困難となる。
種の保存法(1992)で指定する「国内希少野生動植物種」の「生息地等保護区」は、
この手法の典型である。
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